スプライト観測衛星(SPRITE-SAT)は,東北大学が開発を進めている大きさ50cm立方,重量約50kgの小型衛星です. SPRITE-SATは,以下の先端的な科学観測ミッションを行うことを目的としています.
(1) スプライトと呼ばれる中層・超高層大気での発光現象が1989年に発見されましたが,その発生メカニズムは謎につつまれています.SPRITE-SATは,これらの発光現象を宇宙空間から真下に見下ろすように観測し,スプライト発光の構造や全球分布を明らかにすることにより,その発生メカニズムに迫ります.
(2) 近年,地表近傍でガンマ線が発生していることが観測され,雷やスプライトなどの高エネルギー発光現象との関係性が指摘されています.SPRITE-SATは,雷,スプライトとガンマ線を同時に観測することにより,地球起源のガンマ線放射の謎に迫ります.
SPRITE-SATは,東北大学大学院理学研究科および工学研究科の研究グループが,共同で開発を進めています.2008年度打ち上げ予定の温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)の小型副衛星(相乗り衛星)の一つとして選定され,JAXA種子島宇宙センターよりH-IIAロケットにて打ち上げられる予定です.
国の機関による大規模な宇宙開発には,多額の費用と長い開発期間を要します.これに対しスプライト観測衛星(SPRITE-SAT)は,大学が主体となって計画から開発,運用に至るまでのプロセスを実施することにより,絞り込んだシャープなミッション目的を持ち,低コストで短期間の開発を可能とし,新しい科学現象に対してタイムリーな観測を行うことを目指しています.
スプライトと呼ばれる超高層大気発光現象は,雲の上で起こる現象であることから,比較的最近までその存在が知られていませんでした.近年,宇宙からの観測事例もいくつか報告されていますが,メカニズムの解明に至るような本格的,継続的な観測はまだなされていません.私たちはこのような新しいサイエンスの課題を解明するため,世界に先駆けてスプライト現象観測専用の衛星を開発し,まだ誰も見たことの無い新しい観測結果を得ることを目指しています.
SPRITE-SATの開発は,東北大学の教員と学生が中心となって,経験豊富な専門家のアドバイスを受けつつ作業を進めています.衛星としての基本機能を構成する部品については,それぞれ個別の専門職人的なメーカに製作を依頼していますが,衛星の組み立てや様々な試験は大学を中心に進めています.多くの場面で学生が主役となってプロジェクトを進めており,Project-based Education(プロジェクトに参加しながら実践的に問題解決能力などを学ぶ教育課程)としても注目すべき取り組みであると考えています.
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